不安編 Ⅴ

身近に安心源になる人もいない、学業や職業及びそれらに関連した対人関係上のストレスも多い…食や睡眠からSerotonin神経の活動を上昇させるというのも追いつかない環境にあるという人はどうしたらいいのでしょうか?
「不安編 Ⅲ」で紹介したように縫線核にあるSerotonin受容体(特に5-HT1Aという受容体が多く存在します)によってSerotoninの作用が強まりすぎないように調整されているのですが、扁桃体-縫線核を中心とする回路の中でSerotonin神経の活動が低下すると不安感が強まると考えられています。
ということは・・・
慢性的な不安(苛立ち)を解消するにはSerotonin神経をマイナスに調整している5-HT1A受容体の数を減らす方法を不安解消の治療には応用します=Serotoninの分解を防いで量を増やすにはSSRIやSNRIと呼ばれる抗うつ薬、
(*SSRI:Serotonin再取り込み阻害薬=Serotoninの働きを活発にする⇒抑うつ症状/不安感を鎮めます)
(*SNRI:Serotonin・Noradrenaline再取り込み阻害薬=Serotoninとノルアドレナリン 両方の働きを活発にする⇒やる気のなさや億劫さもあわせて改善します)
これらはシナプスでのSerotoninの取り込みを抑えシナプス間際でSerotoninの濃度を上昇させる目的で服用します。
そうすることによってSerotoninの神経活動は活性化されますから、原因のはっきりしない不安は自然にやわらいでいきます。
このようにSerotoninは不安を解消・改善する効果に強く関連する脳内物質ですが、不思議なことに慢性化した不安の場合はSerotoninの前駆体を含む食事を多くとっても不安の解消・改善にはつながりません!
ものすごく簡単に申し上げれば、漠然とした不安やあれもこれも全部合わせてだんだん不安や苛立ちが増幅してしまったというケースでは精神論や根性論だけでなく、食や睡眠の改善でもどうにもできない「不安サイクル」「苛立ちサイクル」「倦怠サイクル」があるということです。
そんなときには科学的根拠からの情報をもとに、こころや精神や気力や気分の問題として片付けるのではなく、脳という臓器の不調と考えて専門機関に相談されることはとても大切だと思います。
次回は神経症状の方向から話題を広げるか、全く別の話題「SLD(限局性学習症)を取り上げるか迷っています…
このブログの読者は多く見積もっても5名はいないという自覚はあるので迷うほどのこともないのでしょうが、書いてる私としては迷うくらいいいじゃん って思ってます。